ゆるゆるとまぶたを開く。水を満たしたグラスを通して 見るようなぼやけた視界が、徐々にしっかりと固まってゆく。 冬の陽ははや落ちかけて、室内はほの暗い。明りはまだ灯されてはいない。 横たわったまま、私は窓の外を眺める。ずいぶん長いこと眠ったと 思ったのに、眠りに落ちる前にもちらついていた雪は、まだ降り続いている。 一定の法則に基づいて流れ落ちる砂の如く、雪は今も全く同じ調子だった。 激しくはなく、止む気配もない。暮れゆく空の下、 白はひたすらに穏やかだった。 私はふと小さく笑った。先ほどまで見ていた夢を思い出したのだ。 夢の世界での私は、精悍で凛々しい青年だった。 もう、ずっと昔に私から消えた若さが、体中に満ち溢れていた。 筋肉のすべてがしなやかに柔らかく、かつ鋭敏に躍動した。 私の隣には、彼女がいた。 彼女は青年の私に笑いかけた。すらりとした百合の花が 咲きこぼれるように。夢の中の彼女は私と同様に若く、 素晴らしく美しかった。暖かい肌理の細やかな白い指で私に触れた。 永遠に続けば良いと願った懐かしい日々が、 私の手元に戻ってき来たのだと思った。幸せな夢だった。 |
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窓の外に降る雪片を、 何をするともなく眺めていると、 彼女の気配を感じた。 首を回して、気配の方向に目をやる。 私の視線を受け止めて、彼女は微笑んだ。 眠っていたのね?そう呟いた。 |
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